toTOP

杏林大学医学部 循環器内科学教室
menu

トップ > 教室紹介 > 診療内容紹介 > 心エコー班

心エコー班

心エコー班

 心エコー検査は、全ての心臓血管疾患の診断および治療効果判定に必要な検査です。非侵襲的で全ての患者さんが検査可能であり、有用性が高い検査法です。当院では年間約10000件の心エコー検査を施行し、急性心筋梗塞、狭心症、心不全、弁膜症、心筋症、先天性心疾患、肺血栓塞栓症、肺高血圧症、大動脈瘤などの疾患の診断および治療効果の評価などをおこなっています。特に当施設では救命救急センターでの重症救急症例の緊急心エコーを行い、24時間体制の循環器専門診療に役立てております。循環器内科における入院・外来患者さんの心エコーによる病態評価・治療効果判定はもちろんのこと、臨床検査部生理検査室では循環器内科以外の診療科における入院・外来患者さんの循環器系スクリーニング・心疾患の評価診断のための心エコー検査の読影・レポート作成も全例行なっております。現在、心エコー技師と循環器専門医が一体となって、心臓血管外科などの他科とも連携した診療業務をおこなっております。

経食道心エコー検査

 経胸壁心エコー(TTE)では診断困難な心房細動症例の血栓や感染性心内膜炎の疣贅の診断などに経食道心エコー(TEE)は必須な検査です。また、弁膜症、先天性心疾患などのstructural heart disease (SHD)の詳細な形態学的評価が可能であり、外科的手術や経皮的カテーテル治療の術前に治療法決定のための必要性が実感できる検査です。現在、二次元とともに三次元経食道心エコー(3D-TEE) を用い、リアルタイム3Dエコーで画像表示し、3D画像解析ソフトを用いて詳細な情報を提供するように勤めております。ハイブリット手術室での経カテーテル大動脈留置術(TAVI)やMitral clipなどのカテーテル治療に経食道心エコーは欠かせない検査であり、ハートチームの一員として診療に当たっております。

負荷心エコー 検査(Stress Echocardiography)

 安静時では判断できない心疾患の診断や心機能障害の評価を、負荷による血行動態や心機能の変化を検討することにより明らかにするのに有用な検査です。
適応症例:以下のような疾患や目的のために負荷心エコーを施行します。 冠動脈疾患:心筋虚血の診断
心筋梗塞を含めた虚血性心疾患:心筋viabilityの評価
拡張型心筋症:収縮呼予備能や運動誘発性僧帽弁逆流・肺高血圧の評価
肥大型心筋症:運動誘発性左室流出路狭窄の診断
僧帽弁逆流症(MR):運動誘発性僧帽弁逆流やそれに伴う肺高血圧の評価
大動脈弁狭窄症(AS):無症候性重度大動脈弁狭窄や低流量低圧較差大動脈弁狭窄の重症度やリスク評価
心不全・肺高血圧:負荷による左房圧上昇・肺高血圧の誘発や左室および右室機能障害の評価

負荷方法としては、運動負荷法と薬物負荷法がありますが、
当院では症例や疾患により運動負荷と薬物負荷のどちらかの負荷法を選択して検査を施行しております。運動負荷は仰臥位エルゴメーター、薬物負荷はドブタミン負荷を用いて施行しております。整形外科疾患や高齢で充分な運動負荷が行えない場合や、心筋症の心機能の予備能の評価、虚血性心疾患の心筋viabilityの評価、低流量低圧較差大動脈弁狭窄の診断などにはドブタミン負荷を行なっております。

3次元心エコー (3D Echocardiography)

 3次元心エコーでは、一般に行われている2次元心エコーに比べてより正確な心室・心房の容積の計測ができます。また各種の心臓弁の立体構造を視覚的に理解しやすく表示でき外科手術前評価などに有用です。特に、複雑な構造をもつ右室容積、右室機能については3次元(3D)心エコーによる解析が必要であり、当院では近年開発された3D解析装置を用いて、臨床研究に活用しております。
また、経胸壁心エコーのみでなく、経食道心エコーでも3D解析を行うことにより解剖的形態的に表示でき、詳細な評価が可能となります。        

スペックルトラッキング心エコー (Speckle-tracking Echocardiography)

 スペックルトラッキング法は、一心周期における局所関心領域の画像情報 (speckle)の移動を自動追従し、その移動変化率(=ストレイン)より心筋線維の収縮の程度を求め、左室全体および局所心筋の心機能を定量的に評価できる方法です。ストレインを用いることにより左室駆出率(LVEF)が低下する前の早期の心筋障害や視覚的評価では評価困難な心筋障害も診断可能となります。また、一心周期のストレイン曲線より最大ストレイン値到達時間を解析することによりpost-systolic shortening (PSS)や左室心筋の非同期収縮(dyssynchrony)という時間成分の異常も評価でき、詳細な心機能評価が可能です。心不全症例においてはdyssynchrony 診断を行い、CRT植え込みによる心臓同期療法の治療前後の設定及び心機能改善の有無の評価を行なっております。我々は、左室のみでなく右室、心房を含めた四心腔全体を解析する三次元スペックルトラッキング心エコーの解析装置であるQuad chamber Tracking (QCT)を用いて、様々な心疾患の新しい心機能評価の研究を行っています。

研修医・学生・技師教育

 心エコー班では、初期研修医および後期研修医(医師3年目のローテーター)、医学生、技師さんに対して、経胸壁心エコー研修を行なっています。研修は、心エコー班の医師が指導し、研修医一人当たり30分ほどの検査時間で行っています。研修目標は、緊急時に必要な経胸壁心エコー検査を独力で行えることとし、初回研修は各アプローチでの正しい描出、2回目では各種ドプラーエコーの撮り方・評価の仕方のマスター、3回目は各種計測のマスター、以降は様々な疾患の診断を行うことなどを目標に行なっています。研修医には、画像を描出することだけでなく、心臓の構造や循環動態を理解しながら検査を行うよう意識してもらい、検査の手技を覚えるだけでなく、循環器疾患の病態を理解するよう指導しております。希望者は、他科の医師、学外の医師、技師さんも参加可能です。