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杏林大学医学部 循環器内科学教室
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TAVI

Transcatheter Aortic Valve Implantation
経カテーテル的大動脈弁植え込み術

大動脈弁狭窄症に対する治療法の1つで、従来行われてきた開胸手術による大動脈弁置換術とは異なり、開胸することなくカテーテルを用いて血管を通じて人工弁を挿入する新しい治療法です。高齢による体力の低下や、呼吸器疾患、肝疾患等の他の疾患などによるリスクのために、開胸し心臓を止めて行う手術が困難な患者さんにとって、TAVIが治療の選択肢となります。




大動脈弁狭窄症の代表的な症状

息切れ・胸痛・失神・呼吸困難

この病気は年単位に徐々に進行するため自覚症状に乏しく、健康診断や他の病気の受診の際に指摘されることも少なくありません。 しかし、症状が出現すると急激に生命予後が悪化し数年で命を落とす危険があります。

大動脈弁狭窄症の診断

心雑音

前述のとおり、無症状で進行するため健康診断等の聴診で心雑音を指摘され発覚することも少なくありません。

心臓超音波検査(心エコー)

最も診断に重要な検査になります。確定診断から重症度判定までこの検査で判断します。放射線被爆もなく患者さんに負担の少ない検査です。

CT

TAVIの術前に必須な検査になります。大動脈弁の形態から石灰の量、カテーテルを挿入する血管の状態をあらかじめ評価し、安全にTAVIが行えるか判断します。各々の患者さんの心臓のサイズに合った人工弁を選択するのも、このCTから判断します。

TAVIの治療方法

手術リスク

低リスク

高リスク

重症度

重症

外科手術

TAVI

軽症

経過観察または薬物療法

保存的治療

特にお薬での治療を指します。症状を緩和することが目的となりますが、弁そのものを治す効果はありません。狭窄症が重度となると効果は限定的で、弁に対する治療すなわち手術かTAVIが必要になります。

外科的大動脈弁置換術

高度大動脈弁狭窄症に対する標準的な治療方法になります。硬くなってしまった弁を人工弁に入れ替える手術です。胸を開けて心臓を一旦止めた状態にして人工弁に入れ替えます。体への負担もあるため、年齢、全身状態、併存する疾患によっては手術を受けることをお勧めできない場合も少なくありません。

TAVI

開胸する必要はなくカテーテルを使って人工弁を挿入する新しい治療方法です。体への負担が少なく手術時間も短いため、術後の入院期間も短いのが特徴です。ご高齢な方や併存する疾患によって外科的大動脈弁置換術をお勧めできないと判断された方や癌を患っている方などがこの治療の適応となります。TAVIが開始されてからまだ10年程度しか経っておらず、それ以上の長期成績がまだ明らかではありません。逆に手術が可能と判断される方は、TAVIの適応にはならず開胸手術が適応されます。

TAVIの対象となる患者様

代表的な対象者を以下に示します。

  • 高齢者(80歳以上を目安とお考え下さい)
  • 呼吸器疾患をお持ちの方
  • 肝硬変などの肝疾患をお持ちの方
  • 開胸手術の既往のある方
  • 胸に放射線治療を受けた既往のある方
  • 1年以上の予後が期待できる悪性腫瘍のある方

等の方が対象となります。手術に対するリスクの判定はTAVIを担当する多職種からなるハートチームによるカンファレンスで評価します。

杏林大学のTAVI

杏林ハートチーム

循環器内科、心臓血管外科、麻酔科の医師、手術室看護師、放射線技師、臨床工学士で杏林ハートチームを作って、患者さん一人一人を全員で共有し、治療の適応から治療方針、具体的な治療法についてカンファレンスで協議し、実際のTAVIにあたっています。

ハイブリッド手術室

本来血管撮影室(カテーテル検査室)と手術室は別の設備ですが、両方の機能を備えた部屋をハイブリッド手術室と言います。TAVIを行うには、このハイブリッド手術室が必要になり、当院でも早くから設備を導入し、TAVIの他にも大動脈ステントグラフト挿入術やペースメーカー植え込み術等にも使用しています。