MitraClipによる経皮的僧帽弁接合不全修復術
外科的手術の困難な重症僧帽弁閉鎖不全症(逆流)患者に対する、カテーテルで行う新しい治療法です。メリットとして、治療に開胸や心臓を止める必要がなく、外科的手術比較し体への負担少ないのが特徴です。また術後早期にリハビリを行いますので、早期の社会復帰が可能となります。
僧帽弁閉鎖不全症とは
通常血流は、心房から心室へと一方行に流れるのに対して、僧帽弁閉鎖不全症は、左心房と左心室を隔てる逆流防止弁(僧帽弁)の異常により、左心室から左心房へと血流が逆流してしまう疾患です。
僧帽弁閉鎖不全の症状
その結果、呼吸困難や浮腫等の心不全症状を生じます。また僧帽弁閉鎖不全は進行性の疾患であり、進行・悪化を認めれば生命にも関わります。
MitraClipによる経皮的僧帽弁接合不全修復術(動画参照)
- 全身麻酔下で太ももの静脈からシース(カテーテル挿入するためのプラスチック製の管)を挿入します。
- その管から左右の心房の壁(心房中隔)に穴を開ける針を通し、左心房内にワイヤーを留置します。
- 留置したワイヤーに沿わせて約8mm径程度のガイドカテーテルを左心房に挿入します。
- ガイドカテーテルの先端からクリップがついたデリバリーシステムを左心房内に挿入します。
- クリップを逆流のある僧帽弁部位まで操作し、僧帽弁の弁尖をクリップで挟み込むようにして閉じます。
- 僧房弁の逆流が減少していることをエコー(超音波)にて確認し、クリップを留置します。逆流の改善が不十分であったり、不完全である場合は、クリップの位置を修正したり、追加のクリップを留置します。
- ガイドカテーテルを抜去し、止血処置を行い終了となります。
MitraClipの対象となる方
- 外科的弁置換術・形成術のリスクが高い方
- 弁の形態がクリップ適している方
当院では外科的手術リスクや全身状態の評価および心臓超音波にて僧房弁形態評価等の循環器内科医、心臓血管外科医、麻酔科医の他、看護師、臨床工学技士、放射線技師等のメディカルスタッフからなるハートチームにて治療方針を決定しています。また、術後早期からスムーズにリハビリが開始できるように、術前から専門スタッフが介入し、患者さんの全身状態の把握を行っています。またクリップの治療後は、心臓のコンディションが大きく変化します。当院心不全チーム、薬剤師と連携をとりながら、術後の薬剤調整や退院後の外来通院等の調整を総合的かつ継続的に行います。